おもしろメディア学

巨人の肩の上

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渡辺です。

タイトルにある「巨人の肩の上」という言葉は、学者の間では有名な言葉で、論文検索サイト「Google Scholar」(https://scholar.google.co.jp) のトップページにも表記されています。

この言葉の初出は12世紀フランスの詩人によるものらしいのですが、有名になったのは17,8世紀の物理学者アイザック・ニュートンと、同じく物理学者の友人であったロバート・フックでの手紙のやりとりによります。フックがニュートンに対し

「なぜあなたには、凡人には想像すらできない彼方の事象を思い浮かべることができるのでしょうか?」

という質問をしたのですが、それに対しニュートンは

「私が彼方を見渡せたのは、それはひとえに巨人の肩に乗っていたからです。」

と返信しています。

このニュートンの言う「巨人」というのは、偉大な先人達が発見してきた様々な理論や実績のことです。ニュートンは、これらの先人達の成果を誰よりも把握しているから、その先を見渡すことができる、それを「巨人の肩に乗る」と表現したわけです。この言葉は、人間が勉強をする根源的な理由の一つとして、よく引用されます。

今年度の研究室ミーティング初回で、私はこの言葉を学生に紹介しました。これは、私が研究を行っていく上でのスタンスの一つでもあります。研究の進め方は人それぞれ、色々な方法があって良いと思いますが、一つの参考になればと存じます。


(メディア学部准教授 渡辺大地)

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音声の認識に必要な情報はどれくらい?

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みなさん、こんにちは、

 
コンピュータによる音声認識には、高度の信号処理、複雑なプログラムと膨大な記憶装置を必要とします。人間の音声認識性能はそれ以上ですので、脳の中ににはさらに高性能で規模の大きな情報処理システムがあると考えられます。
それでは、次の音声を聞いてください。
 
何と言っていましたか?雑音っぽいですが、「おもしろい」ですよね?
さて、この音声のサウンドスペクトログラムを見てみましょう。

Noise_excited_omoshiroi_fdiv800

               図1 雑音っぽい「おもしろい」のサウンドスペクトログラム

 

サウンドスペクトログラムは、横軸が時間、縦軸が周波数を表し、赤いところが音の成分が強く、青いところが音の成分が弱いことを表しています。横軸の時間は0.8秒程度、縦軸の周波数は人の声を聴き分けるのに十分は5500ヘルツ程度までが表されています。

何か縦方向に7つの段がありますね?

実は、この音声は7つの雑音から出来ているのです!周波数の間隔は800ヘルツで、周波数の情報はなんと7つしかないのです。

 

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快挙! レジェンドのメディア学部卒業生がベンチャー企業のCEOへ

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 メディア学部卒業生、長坂剛さんの、快挙のお知らせです。彼は、約10年ほど前にメディア学部を卒業し、日本を代表する超一流企業から内々定9社を獲得。その後、株式会社ソニーに入社し活躍し、メディア学部のフレッシャーズゼミの集合授業、先輩からのエールに何度も登壇いただき、新入生に大いにインパクトを与えてもらいました。

 数年前に、ソニー社内の新規ビジネス提案で高い評価を得た後、社内で具体的なサービスプロダクト(ミンチャレ)を実現しビジネスインキュベーション(孵化器)のフェーズを得て、ベンチャー企業として独立し、代表取締役CEOに就任し、新しい門出をしたとのニューズが飛び込んできました。

 ニュースの概要は、以下を御覧ください。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000024217.html 

 

 長坂剛さんからのメッセージを以下に紹介します。

『本当に多くのお方に支えていただきました、「みんチャレ」ですが、ソニーからA10 Lab Inc.として独立いたしました!ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」からの初の独立案件となります。
同時にサービスの成長をスピードアップさせるために、ソニーなどへの総額6600万円の第三者割当増資を実施いたしました。
これからがスタートアップとして本当の第一歩の始まりです。今まで助けていただきました、ユーザー様や支援者、チームメンバーに感謝するとともに、「習慣化でみんなを幸せに」するために今後とも引き続き応援をお願い致します!』

 先輩の伸びやかで縦横無尽な活躍にエールを送るとともに、在校生、4月からの新入生も、自分の10年後に大きな飛躍があるように、しっかりとした目標をもって大学生活をエンジョイして下さい。

(MS 上林憲行)

もう少し桜らしく ~信号処理で花を描く~その2

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みなさん、こんにちは、

 
少し前に、信号処理ソフト Scilab  を使って花を描くお話を書きました。
そのとき、桜の花をもう少し本物らしくしたいと思った人もいると思います。
今日は、その方法を紹介しましょう。
花を描くには、中心からの長さとx軸からの角度で座標を表す極座標プロットを使います。
花は円周方向に規則的な形をしていますから、まず、0から2πラジアンまでの角度を作ります。πの256分の一の刻みでつくってみます。
omega = 0 : %pi / 256 : 2 * %pi ;
前回は次の式を使って中心からの半径方向の距離を角度に依存して作りました。
rc = 0.5 + 0.5 * sin( 5 * omega ) + 0.1 * sin( 15 * omega ) ;
そして、次の極座標プロットで花を描いたのです。
polarplot( omega , rc ) ;
これを通常の2次元平面でプロットするには
plot( omega , rc ) ;
とすればよいわけなのですが、角度とともに半径方向の距離がどう変わるかを見てみましょう。

Sakura_1_plot

                    図1 桜の花びらの展開図

 

これは、1周2πで5回振動する正弦波とその3倍の15回振動する正弦波を足し合わせたものなので、花びらの付け根にあたるところでも振動が現れてしまいます。3倍の振動は3倍波と呼ばれていることは、前回もご紹介しました。
そこで、この3倍波のほうに5回振動をかけ合わせれば、下のほうで振動が現れなくなるはずです。早速やってみましょう。
re = 0.5 * ( 1 + sin( 5 * omega ) ) + 0.3 * ( sin( 15 * omega ) .* ( 0.5 + 0.5 * sin( 5 * omega ) ) ) ;
さて、どんな振動になるでしょうか?

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おもしろメディア学 ~信号処理で花を描く~

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みなさん、こんにちは、

 
今日は、信号処理ソフトを使って花を描いてみましょう。
フリーで使える信号処理ソフト Scilab  をインストールしてください。
この関数として、中心からの距離とx軸からの角度によってグラフを描くpolarplotというものがあります。これを使ってみましょう。花びらは中心から円周方向に規則的に花びらがついています。角度に応じて距離を変えて曲線を描画することを考えます。
まず、角度をラジアンとして0から2πまで用意します。scilabで
omega = 0 : %pi / 256 : 2 * %pi ;
で作れます。0から2πラジアンまでπの256分の1の刻みで角度の値の列ができます。
まず、花びらが4枚のアブラナを作ってみましょう。円1周で4回半径が増減すればよいので、次のように半径を作ってみます。
rb = 0.5 + 0.5 * sin( 4 * omega ) ;
正弦関数のsinを使っています。omegaが数値の並びなので、rbは数値の並びになります。rbの値は0から1までの間を増えたり減ったりします。
これを半径とし、角度と半径の組で次の極座標プロットをしてみましょう。
polarplot( omega , rb ) ;
そうすると、次のような図が表示されます。

Aburana

                    図1 アブラナの極座標プロット

 

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あなたもつくることができる絵画風フィルタ(ソースプログラムを公開)

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Javaによる絵画風画像生成のための教育用システムのソースプログラムを公開しますので,ぜひ使ってください.写真データをさまざまな画像に変更するフィルターを自分で制作できます.

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コンピュータグラフィックスの一分野である非写実的表現手法(NPR)を学習することを目的として開発しました。CG教育において本教育システムは以下の3つの使い方ができます。

(1)NPR処理による絵画風画像の生成
絵画調画像アプレットを起動し各種のFilterを使えば、各種のNPR手法による画像が生成できます。各種パラメータを変更しながら絵画調画像を生成することができます。本システムをダウンロードして画像データを追加することによって、各自が撮影したデジタル画像の絵画風画像が生成できます。
◎絵画風画像描画システムVer.1.1 (2016.12, Appletviewerで動作,zipファイルをダウンロードして実行してください)

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(2)絵画風画像のアルゴリズム理解
ユーザは各種の入力パラメータを変更することによって絵画風画像生成アルゴリズムの理解を助けることができます。Javaソースプログラムも見ることができるので、パラメータの役割や処理も理解することが可能です。

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【研究紹介】映画の予告編っておもしろいよね?観たくなるよね?じゃあ...どうやって作ったら「おもしろそう」になるの?

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本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部准教授 菊池 です.

本日のブログでは,私の研究室での研究成果で,昨年「芸術科学会論文誌第15巻第4号 pp.125-134」に採録になった論文「セマンティックスコア法による映画予告編映像制作手法」について紹介したいと思います.

皆さんは,映画館の本編上映前やテレビなどで「映画の予告編」をご覧になったことがあるかと思います.そして,「とてもおもしろそうだな」と思って実際にその映画を観にいったことがある人も多いのではないでしょうか?

実際に,視聴者が鑑賞する映画を選択する際に重要視されている要素のひとつに,「映画予告編」があります.「映画予告編」とは,映画の内容や出演者,および雰囲気などを 30 秒から 2 分,長くて 3 分程度という短い時間(尺)に簡潔にまとめ,視聴者が「この映画を見たい」と思わせるためのプロモーション映像です.

毎年,数多くの新作映画が制作され,その度にテレビ CM や映画館で放映されるコンテンツ用としてなど,上映メディアの違いや尺の違い,および放送するタイミング(時間帯)の違いなどによって数パターンの映画予告編も制作しなければならないため,映画予告編を制作する制作者側の負担は決して軽いものではなくなっています.
映画予告編は,「映像作品」という側面と「広告」という側面があり,どちらも両立させながら様々な用途に向けて複数本を制作しなければならないという負担が制作者側には伴うわけです.

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重慶での国際学会

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重慶は、中国南西部に位置する都市で、北京や上海に並ぶ大都会です。三峡ダムで有名な長江沿いにあるため、古来から水運による物流の中心地として栄えたそうです。中心部のビジネス街は、この写真のように急速な発展をとげているようです。
 
今月はじめに、CG映像技術やVRをテーマとした国際学会 [ CYBERWORLDS 2016 ]が、この重慶市で開かれました。地元中国の研究者とともに、日本、ドイツ、オーストリア、スゥエーデン、シンガポール、マレーシアなどから研究者、学生が集まりました。
 
 
私は、"Art and Design" のセッションに "Changing Movement Pattern of Artificial Characters in Isometric Space "というテーマで発表しました。なんと今年は、ウプサラ大学・ゲーム学科の林正樹先生の"Automatic Generation of Personal Virtual Museum"と同じセッションでの発表となりました。林先生と私は、実はNHKの元同僚。いくつもの番組を一緒に作ってきた仲間です。その二人がこうして、中国での国際学会で並んで発表しているとうのは、独特の感慨がありました。
 
CYBERWORLDS は、以下のような幅広いテーマを扱う学会です。
 
Networked and shared virtual worlds / Virtual collaborative spaces / Virtual humans and avatars
Computer vision for augmented and mixed reality / Brain-computer interfaces
Affective computing / E-learning in cyberworlds /  Multi-user web games
Art and heritage in cyberspace, cyber-museums / Cyberethics and cyberlaws
 
しかし、最近はだんだんと画像処理などの技術系の論文投稿が多くなってきたとのことです。チェアマンのアレクゼイ・スーリン先生は「当初の学会方針のように、もっとサイバースペースらしい、アート・デザインの表現系の発表も増えてほしい」とおっしゃっていました。メディア学部における、映像表現やゲーム・デザインなどの研究も注目される学会かと思います。
 
 

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「トポロジー」という数学

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メディア学部教員の渡辺です。


今年のノーベル物理学賞は「トポロジカル相転移」という現象を理論化した米国の研究者が受賞しました。このことを知ったときの私の感想は、「一体マスコミはこれをどのように説明するのだろうか?」というものでした。というのも、この「トポロジカル相転移」という理論は大変に難解なものだからです。私は数学や物理の書籍が好きで、自分の仕事や研究に役立たなさそうなものもよく読んでいるのですが、トポロジカル相転移は大変難解な量子力学と数学を駆使しているもので、私も何度も書籍を読んでいるのですがあまり理解できていません。

ノーベル賞関連では、ノーベル生理学医学賞の大隅先生による「オートファジー」の話題は連日のように解説記事が発行されています。しかし、「トポロジカル相転移」についてはほとんど報道で解説されることはありません。日本人による受賞ではなかったということも大きいと思いますが、おそらく記者の多くは物理学賞での研究内容をほとんど理解できないものであったと推測します。

さて、「トポロジカル相転移」に出てくる「トポロジー」という単語は、日本語では「位相」というのですが、これは高校まではまったく触れられない数学分野です。簡単に言うと、これは「つながり」についての数学になります。

次の図を見てみて下さい。

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広告って面白い

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メディア社会コース進藤です。
メディア学部では、広告の研究に力を入れています。
進藤研究室では、なかでも、動画広告について研究する学生が多くいます。
動画広告というのは、YouTubeやTwitterなどで見かける、映像の広告です。
これまで映像の広告というのは、テレビコマーシャルが中心的なものでした。
しかし、若い人を中心にテレビを見ない人も増え、スマホに多くの時間を使う人が増えてきました。
こうしたなかで、動画広告の重要性が増しています。
動画広告ではこれまでは、テレビコマーシャル用に撮影した映像をそのまま使うことが多くありました。
しかし、テレビとインターネットでは、見る場面も違いますし、お客様のとらえ方も違います。
たとえば、長さ。
テレビコマーシャルは現在ほとんどが15秒です。
けれども動画広告は1-2分の長いものから、5秒程度の短いものまでいろいろあります。
またテレビコマーシャルは番組の合間に、強制的に見せることが容易ですが、動画広告はスキップしたり、見ないようにブロックすることもできます。
どんな動画広告がよいのか、効果があるのか、といったことは、まだ、決定的な法則はありません。
わたしたちは、そうしたことを検討して、動画広告の発展に尽くしたいと思っています。

より以前の記事一覧